大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)600号 判決

被告人 小林一弘 外一名

〔抄 録〕

原判決の掲げる原判示第一の事実の関係各証拠を検討すると、被告人両名は、国鉄赤羽駅付近で給料袋をポケットにしまい込んだ中川房松から金員を力づくでも奪い取ることを相談したうえ、同じバスに乗るなどして同人の跡をつけ午後八時頃人通りのない犯行現場付近にさしかかったところ、被告人小林は被告人安部から「俺は後をつけるからお前は先き廻りをしろ」といわれ、これに従ってう回して被害者中川及び被告人安部の進んでくる道を逆方向から被害者に近づこうとしたこと、ところが被告人安部は、被告人小林が到着するのを待たず、被害者に対し、やにわにその背後から抱きつき、首に腕を廻して絞めあげたうえ、被害者が手にしていた現金一一万一、〇九六円在中の給料袋を取りあげ、被害者を路上に突き倒したこと、被告人小林はその直後被害者の傍らに到着し、被告人安部と共に直ちに現場を逃走しようとしたが、被害者が追いかけてきては困ると考え、その腰部を足蹴にする暴行を加えたところ、被害者が大声で悲鳴をあげた後ぐったりしたので、被告人両名はもはや被害者は追いかけてはこないと思いながらその場を逃げ出したこと、以上の事実を認めることができるから、被告人両名の所為はまず共謀のうえ現金在中の給料袋を強取したものであることが明らかであるばかりでなく被告人小林が被害者の腰を足蹴にした暴行も、被告人安部の給料袋奪取後これに接着した時点で被害者が追いかけてこられないようにするためになしたものであり、このように強盗犯人が一旦奪取した財物の取還を防ぎこれを自らの支配下に確保するためにさらに被害者に暴行を加えその目的を遂げた場合も全体として強盗罪を構成するものと解すべきであるから、被告人らは相互に他の共犯者のなした強取行為につき共同正犯者としての責任を負うべきことはいうまでもなく、ことに被告人小林は被告人安部の行為を単に幇助したに過ぎないとの所論は到底採用できない。もっとも、原判決は、被告人小林が被害者の腰部を足蹴にして暴行を加えた時期を、被告人安部が給料袋を奪取する前であったかのように認定しており、この点はいささか正確を欠き、被告人安部が原判示の暴行を加えて給料袋を奪取した後、被告人小林において被害者から追跡され取還されるのを防ぐためその腰部を足蹴にする暴行を加え強取の目的を遂げた旨認定するのが相当であるが、いずれにせよ、全体として強盗罪の成立することに変りはなく、刑の量定にも格別消長をきたさないものといえるから、その誤りは判決には影響がないものと認められる。

(千葉 永井 中野)

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